殺虫剤の種類②
こんばんは。
今般、薬局などにおいて簡単に手に入るようになった殺虫剤。
皆さんが、日常何気なく使っている殺虫剤は、
化学構造や作用機序の面から見て、
大きく4つのグループに分けることが出来ます。
ここでは、ピレスロイド剤について説明します。
■ ピレスロイド剤
シロバナムシヨケギク、
世間で言う除虫菊の花に含まれる殺虫成分には、
複数の成分が含まれていることが確認されています。
その天然殺虫成分をピレトリンと呼び、
類似構造の化合物群をピレスロイドと称することになりました。
ピレスロイド剤も有機リン剤と同様に神経毒剤ですが、
作用点は神経興奮の伝達に関与するナトリウムチャネル(※1)です。
※ナトリウムチャネルは、高い選択性を持ってナトリウムイオンを
通過させるイオンチャネルです。(チャネルは経路のことです)
・ ピレスロイド系殺虫剤としての能力は
① 粒子を直撃した時の速効性に優れています。
② 有効成分に忌避性があります。
③ 太陽の光によって成分が分解されやすいものが多いです。
④ 人畜毒性は一般に低いが、魚毒性が高いことが特徴です。
(但し、水域に生息する害虫専用もある)
⑤ 微量の粒子が漂っていると、
隙間から開放場所に飛び出してくる効果があります。
(これを追い出し効果と呼んでいます)
ピレスロイドは、有機リン剤のようにじわりじわりと痛めつけて、
確実に仕留めるといったものではありませんが、
微量で瞬時にターゲットを仕留める
優れた能力を持っています。
・薬局で購入する時の見分け方のポイント
① ピレスロイド系の殺虫剤には、
成分名に「リン」が付くのが特徴です。
有機リン剤の「リン」と間違いやすいので、
「リン」と付いているのは、有機リン剤ではないと覚えておきましょう。
そして、魚毒性が若干改善されたのが、
「エトフェンプロックス」という成分で、
これらはピレスロイド様化合物と呼ばれています。
②成分名の前にd-○○のように書かれているものは、
有効成分の効力を増強させていることを表しています
③エアゾール剤(スプレータイプ)には、
「ケロシン」という添加物が含まれているものがあります。
噴射した時には、かなりの低温であるため、
曝露した虫は凍傷のような症状になります。
・代表的な成分と商品名
① ペルメトリン
致死効力と残効性が増強された非常に優れた成分です。
速効力と残効力の両方を持ち合わせるため、
ゴキブリ防除用など幅広く使われています。
但し、水系汚染にはくれぐれも注意が必要です。
●商品名 エクスミン
② フェノトリン
上記のペルメトリンと同様に、致死効力と残効性が増強された優れた成分です。
正しくは、d,T-80フェノトリンと称します。
安全性が非常に高いので、
客室のダニ駆除など居住空間で使われることが多いです。
●商品名 スミスリン
③ ピレトリン
除虫菊に含まれる6種の殺虫成分の総称名です。
昔の蚊取り線香は、この成分が主成分として使われていました。
曝露量が少ないと、蘇生が確認されるという
特徴を持っていることは覚えておきましょう。
ノックダウンさせるのには、これがおすすめです。
●商品名 除虫菊
④ プラレトリン
速効性に非常に優れた成分です。
正しくは、d,d-T80-プラレトリンと称します。
ノックダウン効果と致死効果の両方を兼ね備えた優れものです。
早く確実に駆除したいハチやシロアリなどに使われることが多いです。
●商品名 エトック
⑤ イミプロトリン
害虫に直撃した時の速効性は極めて高く、
歩行能力をすぐさま奪う優れものです。
特に、ゴキブリ駆除剤などに多く使われます。
●商品名 プラル
⑥ メトフルトリン
揮発性が非常に高く、優れた殺虫効力と忌避を兼ね備えた優れものです。
人体に対しても安全性が高く、市販剤としても広く使われています。
⑦ トランスフルトリン
揮発性が非常に高く、殺虫効果も優れています。
揮散させるタイプやミスト剤などが市販剤で使われています。
水に溶けやすい性質ですので、水質汚染には注意しましょう。
⑧ シフェノトリン
ペルメトリンより、致死効力と残効性が優れた成分。
正しくは、d・d-T-シフェノトリンと称します。
市販剤では、ゴキブリ・ノミ駆除用の燻煙剤や煙霧剤など、
不快害虫に対しても広く使われています。
特にゴキブリ駆除では、抜群の追い出し殺虫が可能です。
●商品名 ゴキラート
⑨ エンペントリン
常温で揮散し、無臭性タイプですので、
市販剤では衣料害虫対策で使われています。
衣類にニオイがつかないという点で人気があります。
●商品名 ベーパースリン
⑩ アレスリン
合成ピレスロイド第1号で、
微粒子を虫に直撃した時の速効性や熱安定性に優れており、
蚊取りマット・リキッド・エアゾールなど市販剤で広く使われています。
●商品名 ピナミンフォルテ
⑪ フタルスリン
ピレスロイドの中でも速効性に優れており、
ノックダウン効果が主体の成分です。
致死効果と残効性は低いですが、低毒性なので安全性に富んでいます。
●商品名 ネオピナミン
⑫ レスメトリン
速効性はやや劣りますが、蘇生が無いところが優れており、
致死効果が主体の成分です。正しくは、d-T80レスメトリンと称します。
●商品名 クリスロン
⑬ エトフェンプロックス
従来のピレスロイドと比べて化学構造が複雑になったもので、
ピレスロイド様化合物と呼ばれています。
魚毒性が若干、改善されたので蚊の幼虫用としても使われています。
遅効性ではありますが、致死効力は高いとされています。
●商品名 ベルミトール・トレボン
以上が、代表的なピレスロイド剤です。
あくまでも正しい用法での安全性と効果であります。
間違った使い方をすると、人体への影響や水生生物への害など
人を取り巻く自然環境及び人環境に害が及びますので、
製品を使用する際は、必ずラベル表示を確認して正しく使用して下さい。