殺虫剤の必要条件
こんばんは。
今年の冬は非常に暖かいので、気温が高い日中は、ユスリカの飛翔が見られます。
ジカ熱の流行に伴い、虫が多い時期になると、薬局で殺虫剤を購入される方も
多くなると思います。
では、もしゴキブリなどの害虫が寝室に現れた時、
皆さんはどのような行動を取られるでしょうか?
とにかく鬼の形相で、エアゾール剤をまき散らすのではないでしょうか。
虫の種類は関係なくです。
同じ殺虫剤で殺すといっても、そのターゲットによって効力には差が生じます。
どのくらいの量で殺せるのかという実測値、いわば薬の強さ、
これを致死効力(殺虫力)といいます。
致死効力は、有効成分あるいは製剤(完成品)の
最も基礎的な効力であります。
成虫を対象として、致死効力を得る基礎的な試験方法には、
直接虫体に薬剤を滴下する 『微量滴下法』 と
所定濃度の薬剤に虫体を入れる 『浸漬法』 があります。
この方法によって、中央致死濃度を求めます。
中央致死濃度はLD50または、LC50で示します。
簡単に言うと、実験昆虫の50%致死量(濃度)です。
この数値は、小さいほど微量で効くということで、致死効力が高いとされます。
では、殺虫剤は致死効力が高ければそれで良いのか?
実は、それだけではいけません。
これだけでは、環境汚染を無視した形になってしまいます。
従って、残効性・速効性・人畜毒性などの条件も
クリアしなければならないのです。
速効性は、
薬剤を処理した後の害虫の反応の速さを示し、
反応の早い成分は速効性薬剤と呼ばれ、遅い成分は遅行性薬剤と呼ばれます。
速効性の評価は、KT50値(50%ノックダウンタイム)で行います。
速効性薬剤は、一般的に5分以内に効力を示し、
処理後の反応が早いので一般的には歓迎されるのですが、
24時間以内に効力が失われることや、
食毒剤は摂食忌避に働くなどの弱点もあります。
なお、致死効力と速効性の相関はほとんどありません。
残効性は、
薬剤が残渣面や水中で害虫に効力を発揮する期間と考えれば良いです。
速効性薬剤と違い、処理後も効き目が残り続ける性質です。
しかし薬剤は残っていても、害虫が効力を示さない時は
残効性が無くなったといえるでしょう。
又、ゴキブリやシロアリなどの有害生物には、
残効性が高いものが用いられますが、
残効性が高いということは、自然界で残り続ける
ということも把握しておかなければなりません。
有機燐剤やピレスロイド剤は、
若齢幼虫よりも老齢幼虫、また雌より雄の方が微量で良く効きます。
卵や蛹(さなぎ)に対する効力は低いとされています。
蛹期のない(不完全変態)昆虫、例えばゴキブリの場合などは
成虫より老齢幼虫の方が低感受性、つまり殺虫剤が効きにくいのです。
このことから、
雄よりも雌、成虫よりも幼虫の方が強い ということが分かると思います。
人間も男よりも女、社会人よりも学生の方が元気ですもんね。
昆虫成長制御剤(IGR剤)は、
完全変態(蛹の時期を要する)をする昆虫に対して、羽化させないものです。
幼若ホルモン様物質は
老齢幼虫から蛹に移行する時に、最も高い効力を発揮しますが、
卵やふ化直後の幼虫に対する効力は低く、用量処理を行っても効果が得られません。
同じIGR剤でも
表皮形成阻害剤は遅行性ですが、
若い幼虫ほど効力活性が高いので、大量発生時の対応はこちらの方になります。
ただし、バクテリアや甲殻類に影響が出る場合もあるので、
処理する場所には注意しましょう。