勘違いされる殺虫剤の抵抗性
こんばんは。
薬が効かなくなってきた
というセリフがあります。
『1頭の昆虫が薬剤を浴びせられているうちに、
徐々に強くなっていくもの』
これは勘違いです。
害虫の殺虫剤抵抗性の獲得は、
集団の中に極めて低い頻度で存在する低感受性の一握りの個体が、
薬剤による淘汰でその比率を高めることから始まります。
簡単にいうと、
昆虫の集団の中には、もともと薬に強いタイプと弱いタイプが存在していて、
薬を浴びている中で強いタイプだけが生き残り、
その子孫が増えていくと最終的に、
その集団には効かなくなったという現象になるということです。
・殺虫剤の抵抗性
①単独抵抗性 ・・・ 1種類の薬剤のみの抵抗性
②交差抵抗性 ・・・ 1化合物群の2種以上の薬剤に抵抗性を獲得
③複合抵抗性 ・・・ 2化合物群以上、各1種以上の薬剤に抵抗性を獲得
私たち人間もそうですが、
どんな生物に於いても異物や有害物質を排除しようとする能力があります。
その能力が薬剤抵抗性を生み出しているのです。
この対策としましては、
以下の6点で殺虫剤を有効に利用することが出来ます。
① 剤型を変えましょう
効率の良い製剤(完成品)を選びます
② 有効成分を変えましょう
作用機序の異なる薬剤を使用します
③ 有効成分を混合使用しましょう
作用機序の異なる薬剤同士の組み合わせをします
④ 共力剤の添加をしましょう
効力増強や共力剤自身の効力の利用をします
⑤ 施工方法の変更をしましょう
接触毒や呼吸毒の施工から食毒剤への変更をします。
⑥ 殺虫剤のローテーション処理をしましょう
作用機序の異なる薬剤を複数用意して、定期的に変更します
という点が挙げられます。
【日本の殺虫剤抵抗性の歴史】
1950年 日本で最初に薬剤抵抗性が報告される
コロモジラミに対するDDT抵抗性が発表
その後、イエバエ、アカイエカ、ブユを対象に
塩素剤抵抗性が多く報告される
1960年 イエバエのダイアジノン抵抗性が発見される
1965年以降
チャバネゴキブリのディルドリン抵抗性が広がる
1970年代
イエバエとアカイエカ群の有機燐剤抵抗性が報告される
後半~1980年代
ハエ、蚊、ゴキブリのピレスロイド抵抗性が報告される
1980年初
水田ではコガタアカイエカに農薬散布によって強い
有機燐剤抵抗性が出現する
1980年後半以降
IGR剤にイエバエとアカイエカ群に対する
低感受性ないし抵抗性の集団が出現