殺虫剤の種類①
こんばんは。
今般、薬局などにおいて、簡単に手に入るようになった殺虫剤。
皆さんが、日常何気なく使っている殺虫剤は、
化学構造や作用機序の面から見て、
大きく4つのグループに分けることが出来ます。
ここでは、有機リン系殺虫剤について説明します。
■ 有機リン剤:有機リン酸エステル化合物
神経毒剤で、作用点は神経の刺激伝達に関わる
アセチルコリンというものを分解するアセチルコリンエストラーゼを阻害します。
阻害されると、神経が麻痺して、異常興奮・異常行動を起こし、
生理的障害を経て死に至ります。
・有機リン殺虫剤としての能力は、
① 速効性が高いものがあります。
② 残効性が一般的には高いとされています。
③ 昆虫類に対して抵抗性がつきにくいという長所があります。
④ 水で希釈するので、分解しにくいという特徴があります。
⑤ 人間に対しては、急性毒性の心配がありますが、
慢性毒性の心配は少ないです。
・有機リン殺虫剤としての効力は、
速効性、残効性、接触効果、吸入効果、食毒効果、
殺成虫性、殺幼虫性など多種に挙げられます。
有機リン剤は、次ページでお話するピレスロイド剤のように、
微量で瞬時にターゲットを仕留める能力こそはありませんが、
残効力が高いので、
じわりじわりと痛めつけて、確実に仕留める
といった能力を持っています。
・魚毒性について
魚毒性が高いものは少ないので、
蚊幼虫対策用の承認を得た成分が比較的多いです。
・薬局で購入する時の見分け方のポイント
ラベル表示を見て、
成分名に「-ホス」と「-オン」「-ノン」「-ゾン」などの
共通の母音と「ン」が付いているのが特徴です。
・代表的な成分と商品名
① フェニトロチオン
衛生害虫に対して有効で、残効力に富んだ成分です。
人畜に対する毒性が低いところが特徴です。
尚、遅効性ですが、致死効力は高いとされています。
●商品名 スミチオン
② プロペタンホス
上記のフェニトロチオンが対象型なのに対して、
非対象型の構造系持つ有機リン剤です。
対象型有機リン剤であるフェニトロチオンなどに
抵抗性を持った害虫(特にイエバエ)に対して、効果が得られます。
遅効性ですが、広範囲の害虫の成虫と幼虫に対して、
高い致死効力を持っており、残効性にも優れています。
●商品名 サフロチン
③ ダイアジノン
残効性は上記のプロペタンホスには劣りますが、
速効性に関しては高い効果を発揮します。
昭和30年代前半に承認を得た非常に長い殺虫成分であります。
ゴキブリ・蚊・ハエに有効です。
●商品名 ダイアジノン
④ ジクロルボス
原体は液体で揮発性の高い成分であり、
残効性は殆ど期待出来ない反面、速効性には抜群の効果を発揮します。
●商品名 DDVP
⑤ ナレド
水に不溶でジクロルボスと同様に速効性に抜群の効果を発揮します。
但し、毒性はジクロルボスの3分の1程度です。
尚、有機リン剤の特徴とも呼ばれる「ホス」「-オン」が付かないので、名前が特徴です
商品名 ジブロム
⑥ クロルピリホスメチル
安全性が高く、広範囲の害虫で有効かつ効力もあり、
非常にバランスが取れた成分です。
但し、水に不溶な点と紫外線によって急速分解される点は、
使用するにあたり覚えておかなければなりません。
●商品名 ザーテル
⑦ フェンチオン
広範囲の害虫に有効であり、特に蚊の成虫と幼虫に効果があります。
残効性及び殺虫力に優れています。
●商品名 バイテックス
⑧ トリクロルホン
魚毒性が低い点が長所であり、
接触毒よりも食毒剤として効果を発揮します。
有機リン剤の中で、唯一水に溶けるので覚えておきましょう。
●商品名 ディプサイド
⑨ マラチオン
やや遅行性の薬剤で、独特の異臭はありますが、
毒性が比較的低いことが特徴です。
動物薬として畜体に直接使用できるものがあります。
●商品名 マラソン
⑩ テメホス
水に溶けにくく、人畜毒性が極めて低いことが特徴です。
水棲昆虫の幼虫に効力を発揮するので、蚊の幼虫対策に適しています。
●商品名 アベイト
以上が、代表的な有機リン剤です。
あくまでも正しい用法での安全性と効果であります。
間違った使い方をすると、
人体への影響や水棲生物への害など
人を取り巻く自然環境及び人環境に害が及びますので、
製品を使用する際は、必ずラベル表示を確認して正しく使用して下さい。